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教員を辞めたい、もう限界。甘えではない理由と、辞める前の順番・相談先

「教員を辞めたい、もう限界」と感じたら、辞める前に体を守る・選択肢を増やす・決めるの順で。限界のサイン、休職と退職の違い、相談先、転職先の例、退職の流れまで、教員16年で退職した主宰の経験とあわせて整理しました。

教員を辞めたい、もう限界。甘えではない理由と、辞める前の順番・相談先|公務員のキャリアコミュニティ「コムパス」のコラム

この記事の要点

  • 限界が近いときの順番は「体を守る → 選択肢を増やす → 決める」。決めるのは最後でいい
  • 精神疾患で休職した公立学校の教育職員は令和6年度に7,087人。限界を感じるのは、個人の弱さだけの問題ではない
  • 退職の前に、休む・減らす・離れるの3つの手がある。休職と退職は「戻れるかどうか」が決定的に違う
  • 相談先は目的で分ける。体は医療と共済の窓口、制度は人事担当、進路は外に出た人と中に残っている人の両方
  • 主宰の榊原立城は教員16年で退職。自分の向き不向きを理解しないまま次の仕事に飛び込んだことを、振り返っていちばんに挙げている

統計は文部科学省の公表資料(2026年9月時点で確認できた最新の値)によります。病気休暇・病気休職・給与・共済の給付の取り扱いは、所属する教育委員会・自治体の条例や規程、公立学校共済組合の規程で異なります。この記事は一般的な整理です。適用の可否は必ず所属の規程と人事担当、共済組合でご確認ください。体調の判断は医療機関にご相談ください。

朝、出勤の準備をしている途中で動けなくなる。日曜の夕方から動悸がする。生徒や同僚の前では普通にふるまえても、家に帰ると疲れ切って何もできない。こういう状態のときに検索するのは、たいてい「辞め方」です。

けれど、限界が近いときにいちばん避けたいのは、その状態のままキャリアを決めることです。判断力は体調と一緒に落ちます。回復してから同じ問いを見ると、別の答えになることが少なくありません。

順番があります。体を守る、選択肢を増やす、決める。この記事はこの順番で書いています。

書いているのは、キャリアに悩む公務員・教員のためのコミュニティ「コムパス」です。主宰の榊原立城は、公立中学校の教員を16年(講師の期間を含めると約20年)務めて退職しました。辞めたいと最初に思ったのは1年目で、実際に辞めたのはそれから10年以上あとです。その間にやったこと、やらずに後悔したことも、あわせて書きます。

「もう限界」は甘えではない。数字で見る教員の現状

教員を辞めたいと感じるのは、甘えではありません。数字を見ると、限界を感じているのがあなただけではないことが分かります。

文部科学省の調査では、精神疾患を理由に病気休職した公立学校の教育職員は、令和6年度に7,087人でした。全教育職員の0.77%にあたります。前の年度(7,119人)からわずかに減ったものの、割合は横ばいで、平成27年度(5,009人)と比べると、2,000人以上増えています。

休職した人の要因として、教育委員会が挙げたものの上位は次のとおりです。

要因 割合
業務内容(児童・生徒に対する指導そのもの) 26.5%
職場の対人関係(上司・同僚・部下など) 23.2%
業務内容(校務分掌や調査対応などの事務的な業務) 12.7%
元々の精神疾患の悪化 11.8%
個人的な対人関係 8.9%
職場外の人との対人関係(地域住民・保護者など) 6.1%

出典:文部科学省「令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査について(概要)」(令和7年12月22日)。「その他」と「教育委員会として把握していない」を除いた割合です。

働く時間も長いままです。令和4年度の教員勤務実態調査では、教諭の平日1日あたりの在校等時間は、小学校で10時間45分、中学校で11時間01分でした。6年前の調査からは30分ほど短くなっていますが、1日の正規の勤務時間(7時間45分)を大きく超えています。

限界を感じる背景には、個人の資質だけでは説明できない仕事の構造があります。「自分が弱いから」と考えて一人で抱え込むのが、いちばん危ない進み方です。

限界のサインを、自分で見分ける

教員の仕事は、少し無理が効いてしまいます。授業は成立しているから大丈夫、と考えているうちに、朝が来なくなる。自分の状態を、感覚ではなく項目で確かめてください。

体に出るサイン

  • 眠れない、または夜中や早朝に目が覚める日が続く
  • 食欲がない、または食べすぎる
  • 休日に休んでも回復しない
  • 頭痛・腹痛・動悸・めまいが続く

気持ちに出るサイン

  • 日曜の夕方や長期休みの終わりに、強い憂うつや不安が来る
  • 理由なく涙が出る
  • 以前は楽しめていたことに興味がわかない
  • 「消えてしまいたい」と考えることがある

行動に出るサイン

  • 朝、家を出られない。学校の近くで足が止まる
  • 簡単な書類や連絡に、以前の何倍も時間がかかる
  • ミスや忘れ物が増えた
  • 生徒や家族に、以前より強く当たってしまう
  • 人と話すのを避けるようになった
  • お酒の量が増えた

ひとつでも続いているなら、キャリアの話は後回しにして、医療機関にかかってください。辞めるかどうかは、そのあとでいくらでも考えられます。

「消えてしまいたい」と考えることがあるなら、今日のうちに誰かに話してください。夜間でもつながる窓口があります。

  • #いのちSOS:0120-061-338(無料・24時間)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(無料・24時間)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付時間は都道府県によって異なります)

ほかの窓口は厚生労働省の「まもろうよ こころ」にまとまっています。命に関わる緊急時は、119番に連絡してください。

サインの見分け方は働きすぎのサインを、自分でどう見分けるかでも詳しく扱っています。

「辞めたい」の中身を分ける

限界の原因がどこにあるかで、効く手が変わります。「辞めたい」をひとつの気持ちとして扱わず、中身を分けてみてください。

苦しさの中心 よくある状態 まず効きやすい手
業務量・時間 睡眠を削って授業準備や事務をしている 減らす(担当の調整)
生徒指導・学級経営 学級がうまく回らず、毎日が消耗戦 減らす・離れる(担任や学校を変える)
部活動 休日も練習や大会で埋まり、休める日がない 減らす(顧問の担当や休日の指導の分担を相談する)
保護者対応 連絡が来るたびに動悸がする 減らす(組織で対応する形にする)
職場の人間関係 管理職や同僚との関係がつらい 離れる(異動)
給与・待遇 残業代が出ず、働いた時間に見合わないと感じる 選択肢を増やす(制度の変化と外の働き方の両方を知る)
方針への違和感 納得できないことをやり続けている 選択肢を増やす(外の働き方を知る)
将来への不安 60歳までこの働き方は続けられない 選択肢を増やす(在職中の準備)

榊原の場合は、複数が重なっていました。好きな仕事ではあったものの、睡眠時間を削って働く状態が続き、保護者の要求も年々厳しくなっていった。うつや適応障害も経験しています。

このまま60歳までこの仕事を続けるのは、嫌というか、無理だなと感じたんです。

もうひとつ、転職ではなく独立を選んだ理由として榊原が挙げているのが、方針への違和感です。子どもにとって良くないと思うことでも、決まったからやる、という場面がある。自分が納得できないことをやるのがすごく嫌だった、と話しています(インタビュー)。

体と時間の問題は「減らす」「休む」で軽くなることがあります。一方、違和感や将来の不安は、休んでも消えません。どちらが中心かで、次の一手が変わります。

まず、体を守る

サインが出ているなら、最初にやるのは受診です。心療内科や精神科が敷居が高ければ、かかりつけの内科からでも構いません。

ここで大事なのは、自分の状態を自分だけで判定しないことです。医師の意見があると、休む・減らすの話を職場とするときにも、話が早くなります。

受診と並行して使える窓口もあります。公立学校の教職員であれば、公立学校共済組合が組合員と被扶養者向けに相談窓口を設けています。

  • LINEを使ったメンタルヘルス相談
  • 電話・面談によるメンタルヘルス相談
  • Web相談
  • 教職員電話健康相談24(24時間・年中無休・無料。医師・保健師・カウンセラーなどが対応)

教職員電話健康相談24については、共済組合の千葉支部の案内に「相談者のプライバシーに関することは、所属所、教育委員会、公立学校共済組合千葉支部等には報告されない」と書かれています(支部ごとの案内も確認してください)。職場に知られずに相談したい場合の、最初の入口になります。連絡先は組合員向けのページで確認してください。

お金が心配で受診をためらう人が多いのですが、順番が逆です。まず体、次に数字。休職中のお金は休職中のお金はどうなるかにまとめました。

退職の前にある、3つの手

辞めるかどうかの前に、取れる手があります。この3つを試さないまま辞めると、「あれはやっておけばよかった」が残ります。

1|休む

病気休暇・病気休職は、辞めるための前段階ではありません。判断できる状態に戻すための時間です。戻れる状態を残したまま離れられるのが、退職との決定的な違いです。

期間と給与の扱いは、所属の条例・規程で決まっています。多くの自治体は国家公務員の制度に準じていて、国の制度では、病気休暇は原則として連続90日まで、病気休職は3年を超えない範囲とされています。休職中の給与は、国の制度では満1年に達するまで一定割合(100分の80)を支給できる形です。そのあとは共済組合の傷病手当金などの給付に移ります。あなたの所属で実際にどうなるかは、人事担当に確認してください。

2|減らす

担任・校務分掌・部活動の担当は、年度の途中でも調整できることがあります。「言っても無駄だ」と思って言っていないだけ、という場合もあります。

管理職に伝えるときは、要望ではなく状態を伝えるほうが通りやすい。たとえばこうです。

最近、夜に眠れない日が続いていて、朝に体が動かないことがあります。いまの担当のうち、◯◯と△△は今の状態だと期限までに終えられません。どれを残してどれを外すか、相談させてください。

「つらいので減らしてください」ではなく、何がどれだけできない状態なのかを具体的に言葉にします。1週間の記録(何にどれだけ時間がかかったか、突発の対応が何件あったか)を添えると、話が早くなります。

部活動は、苦しさの中心になりやすいのに「顧問は外れられないもの」と思い込みやすい担当です。顧問を複数にできないか、休日の指導を分担できないかを、いまの状態とあわせて相談してください。休日の部活動を地域のクラブなどに移す「地域展開」も国の方針として進められているので、所属の学校や自治体でどこまで進んでいるかも確認しておくと、話がしやすくなります。

保護者対応の負担が中心なら、保護者対応の負担を、個人の問題にしないためにも読んでください。

3|離れる

異動の希望、別の校種への移動、教育委員会事務局への異動。組織の中で環境を変える手です。効く人と効かない人がいます。人間関係や学校の事情が苦しさの中心なら、環境を変えると軽くなることがあります。仕事のやり方そのものへの違和感が中心なら、異動だけでは変わらないことも多くあります。

異動の考え方は異動がつらいとき、辞める以外の手をどれだけ持てるかにまとめました。

3つのうちどれを選ぶかは、状態と職場によって変わります。コムパスでは、すでに転職や独立をした元公務員・元教員と、いまも公務員として働いている人の両方に、どの順番で何をしたかを聞けます。

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休職と退職は、戻れるかどうかが違う

休む(病気休暇・休職) 辞める(退職)
身分 残る なくなる
収入 規程に応じて一定期間、給与や共済の給付がある 途切れる(退職手当は別)
戻る道 復職できる 採用試験の再受験のほか、講師登録や経験者採用など、自治体ごとに道がある
決める時期 回復してから決められる その時点で決める
次の職場への説明 休職の理由と回復を説明する 退職の理由を説明する

順番を逆にすると、戻る道が細くなります。回復してから決めても遅くない、というのはこの表の話です。

休職に入ったあとの進み方は休職したあと、復職と退職をどう考えるかにまとめました。

相談先は、目的で分ける

限界のときほど、一人で決めてしまいがちです。けれど、相談する相手をひとつに絞ると、答えも偏ります。目的ごとに分けてください。

目的 相談先 聞けること
体調 医療機関、共済組合の相談窓口 休むべき状態か、どう回復するか
制度 所属の人事担当、共済組合 病気休暇・休職の期間、給与、給付
仕事の調整 管理職、産業医などの健康管理の窓口 担当を減らす・変える
進路 外に出た元教員・元公務員、いまも働いている教員・公務員 辞めた人・残った人が実際にどう動いたか

いちばん相談しにくいのが、最後の「進路」です。職場の同僚には利害が絡み、家族は心配が先に立ちます。転職の相談窓口は、転職すると決めたあとの進め方を相談する場なので、辞めるかどうか迷っている段階の相談には向きにくいことがあります。

だからこそ、外に出た人と、中に残っている人の両方に聞くのが大切です。辞めた人の話だけを聞けば辞める方に、残っている人の話だけを聞けば残る方に傾きます。両方から話を聞いて初めて、自分の状況に当てはめて比べられます。

コムパスは、キャリアに悩む公務員・教員が、転職するか今の職場を続けるかを、すでに転職や独立をした元公務員・元教員と、いまも公務員として働いている人の両方に相談できるコミュニティです。現役の方は、名前や所属を出さずに参加できます。コムパスは、辞めることも、続けることも勧めません。相談先の選び方は職場にも家族にも言えないとき、誰に相談するかで詳しく書いています。

辞めるかどうかを考える材料

体調が戻ってきたら、ここで初めて辞めるかどうかを考える材料がそろい始めます。判断の目安を置いておきます。

もう少し待ってから決めてもいいサイン

  • 休んだら、仕事のことを考えられる程度には回復した
  • 苦しさの中心が、特定の学校・学年・人間関係にある
  • 担当を減らしたら、授業そのものは楽しめている

外の選択肢を本気で調べ始めていいサイン

  • 休んで回復しても、戻ることを考えると体調が崩れる
  • 異動や担当の変更を試しても、同じ苦しさが続いた
  • 仕事のやり方そのものに納得できない状態が、何年も続いている
  • 「60歳までこの働き方は無理だ」という感覚が、回復したあとも消えない

後者に当てはまっても、すぐに辞める必要はありません。調べ始めることと、辞めることは別です。

制度が変わる途中である点も、材料のひとつです。公立学校の教員には、時間外勤務手当の代わりに給料月額の4%の教職調整額が支給されてきました。「働いた時間に見合わない」と感じる理由のひとつは、この仕組みにあります。2025年に給特法が改正され、教職調整額は2026年1月から段階的に引き上げられ、最終的に給料月額の10%になります。あわせて、教育委員会には業務量を管理し健康を確保するための計画を作り、公表することが義務づけられました。国は、令和11年度までに月の時間外在校等時間を平均30時間程度に減らす目標を掲げています。

ただ、変化がどれだけ早く自分の学校に届くかは、地域と学校によって違います。所属の教育委員会が公表する計画を読んで、自分の学校で何が変わりそうかを見てから判断するのも、ひとつの方法です。

辞めると決めたら、時期とお金を先に確かめる

時期

教員の仕事は年度で回るので、辞める時期も年度末が基本になります。ただ、これは決まりではなく、影響を小さくするための慣行です。年度末で辞める場合、多くの学校では前の年の秋から冬に管理職との相談が始まります。時期は所属によって違うので、早めに確認してください。

体調が限界のときに「年度末まで」と決めてしまうと、そこまで持たないことがあります。年度を待つかどうかも、医療の判断を踏まえて決めてください。時期の考え方は教員が辞めるタイミングを、年度で考えるに書きました。

手続きの流れ

  1. 管理職に、辞める意思と希望の時期を伝える
  2. 退職願の様式と提出期限を管理職(校長)に確認し、学校を通じて提出する(提出先は任命権者の教育委員会)
  3. 担当業務、学級や部活動の状況、関係先を引き継ぎ資料にまとめる
  4. 退職手当の見込み額と振込時期、年次休暇の扱いを確認する
  5. 健康保険(転職先の健康保険、共済の任意継続、国民健康保険のどれか)と年金の切り替え先を決めておく
  6. 最終日に、職員証などの貸与品を返す。共済組合の資格確認書が手元にある場合は、所属を通じて返す(扱いは共済組合の支部の案内で確認)

お金

見落としやすいのが、公務員は原則として雇用保険の対象外だという点です。民間の会社員のような失業給付は、基本的にありません(退職手当が失業給付に相当する額に満たない場合に、差額が支給される仕組みはあります)。

辞めたあとの生活費は、次の順で計算します。

  1. 退職手当の見込み額を人事担当に確認する(自己都合か、勤続年数はいくつか)
  2. 毎月の固定費を出す
  3. 退職後の健康保険(転職先の健康保険、共済の任意継続、国民健康保険のどれか)と、国民年金に切り替える場合はその負担を足す
  4. 前の年の所得にかかる住民税を足す
  5. 収入がない状態で何か月暮らせるかを出す

計算の手順は辞めたあとのお金を、退職手当から先に計算するに、手続きの順番は公務員を辞めると決めてからの手続きを、時系列で並べるにまとめています。

教員から移る先の例

調べ始めるときは、教員の経験がどこまで地続きかで3つに分けると整理しやすくなります。

分け方 例 地続きになる経験
教育に近い仕事 私立学校・通信制高校、学習塾・予備校、教材・教育サービス企業の企画や営業、フリースクール、放課後等デイサービス、教育系NPO 授業設計、学級経営、子どもとの関わり
人を育てる・支える仕事 企業の人事・研修担当、研修講師、キャリアアドバイザー、コーチ 面談、目標設定、集団への説明
教育から離れる仕事 営業、カスタマーサポート、事務・バックオフィス、IT・Web系の職種、ほかの自治体や公的機関 調整、書類作成、保護者対応で培った折衝

教員免許が必要な仕事は限られます。免許が活きる場所は教員免許を活かせる仕事と、免許がなくても効く経験に、未経験の職種に応募するときの書き方は教員から未経験の職種へにまとめました。

選ぶ順番にも注意が必要です。次の節で書くとおり、主宰の榊原は「稼げる」「未経験でもできる」で仕事を選び、合わずに苦しい1年を過ごしました。職種の一覧から選ぶ前に、自分が何に向いているかを確かめておくほうが、結果的に早く進めます。

教員を16年務めた主宰の経験から、限界の手前でできること

ここからは、主宰の榊原立城の経験です。本人のインタビューと、聞き手を務めたSHUNさんの回で話した内容をもとにしています。

1年目から辞めたかった。それでも10年以上とどまった

榊原は教員1年目で、仕事の大変さと、生徒との関係をうまく築けないことに悩み、親に「辞めたい」と伝えました。せっかく公務員になったのに、と残念がられ、「3年はまずやってみたら」と言われて続けています。

そこから長くとどまった理由は、親の気持ちと、お金でした。教員を辞めたあとに何の仕事ができるのかが、まったく見えなかった。

自分には今の職場、役所とか学校以外にできることがないと思って、足踏みされている方はたくさんいらっしゃると思うんです。僕もそれで正直、10年以上そういう思いでとどまっていました。

親に納得してもらうのは無理だと考え、辞める5〜6年前の時点で「もう決めたから」と伝えています。直前に言ったのではなく、「今年ではないけれど、そう遠くない未来に辞める」という伝え方でした。家族への伝え方は親に反対されて辞められないとき、伝える順番を変えるで扱っています。

準備はした。でも自己理解はしていなかった

在職中の最後の6〜7年は、辞めることを考えながら、自分に何が向いているかを考えたり、資格を取ったりしていました。ただ、それで稼げるイメージは持てなかった。

最後の1年に目に留まったのが、動画編集のフリーランスという働き方です。在職中は勉強する余裕がなく、スクールに入会だけしておいて、3月に退職、4月から学び始めました。

「稼げる」「未経験でもできる」で選んだ仕事は、自分に合いませんでした。スクールに何十万円も払っていたので、簡単には抜け出せない。退職後の1年ほどは、本人が「キャリア迷子」と呼ぶ時期でした。

もっとちゃんと自分のことを理解して、自分がどんなことをやりたいのか、どんなことに向いているのか。そこの自己理解はやっておいたらよかったなと思います。

その後コーチングに出会い、いまはコーチングと自己理解をもとにした事業設計の仕事をしています。

16年の経験は、外でも活きた

辞めたあとの榊原は、「この16年で経験したことは、学校の外では全然活かせない」と思っていました。実際は逆でした。

一人の話を聞き、一緒に目標を立て、そこに向かう行動を決める。いまのコーチングの仕事は、担任として生徒にしていた関わりの大人版だと本人は話しています。30人以上のクラスで、勉強や運動だけでは測れない一人ひとりの力を見てきた経験も、いまの仕事の土台になっています。

経験の言い換え方は教員の経験を、外の仕事の言葉に言い換えるにまとめました。

榊原の経験から整理すると

本人がいちばんに挙げた後悔は、自己理解です。そこに本人の話をあわせて、編集部として整理すると次の3つになります。

  1. 辞めたあとに何ができるかを、在職中に確かめる:見えないままだと、足踏みが長くなる
  2. 仕事を選ぶ前に、自分を知る:「稼げる」「未経験でもできる」ではなく、向き不向きから選ぶ
  3. 辞めるためではなく、選べる状態をつくる:在職中に、自分の力が外のどこで活きるかを見に行く

本人は、辞めることが正解だとは考えていません。

絶対に辞めるのが正解とは思っていません。ただ、自分の未来に選択肢を持つということを、現役のうちにやっておくのがすごく大切だと思います。

別の道の例として、町役場の職員から独立したSHUNさんは、正職員を辞めてすぐ独立するのではなく、副業規制の対象外になるパートタイムの会計年度任用職員として1年働き、仕事を試してから独立しています。兼業の扱いは自治体の定めによるため、同じ形が取れるかは所属で確認が必要です(インタビュー)。一気に辞めるか、段階を踏むか。道はひとつではありません。

生徒と同僚への影響を、どう考えるか

辞めることを考えるときに、いちばん重くなるのがここです。年度の途中で抜けたら生徒に迷惑がかかる、同僚の負担が増える。その気持ちは、教員の方にほぼ共通しています。

ただ、考える順番としては後です。倒れてから離れる場合の影響は、準備して離れる場合より大きくなります。急な欠員は代わりの手配が難しく、引き継ぎの資料も残りません。

できることは3つあります。

  1. 早めに状態を伝える:管理職が動ける時間をつくる。これがいちばん影響を小さくします
  2. 引き継ぎの材料を残す:担当している業務、進行中の案件、関係先。休む前に書ける範囲で
  3. 自分が抜けても回る形を、いまのうちに1つ作る:自分しか分からないものを共有しておく

責任感がある人ほど、限界まで言わずに抱えます。抱えた結果、突然離れることになるほうが、周りにとっても大変になる。そういう順番で考えてください。

いま、この週にやること

  1. 限界のサインを確認する。当てはまるものがあれば、受診の予約を取る
  2. 1週間、何にどれだけ時間がかかったかを記録する
  3. 管理職に伝える文面を、上の例を参考に下書きする
  4. 病気休暇・病気休職の規程を、庁内ポータルか人事担当で確認する
  5. 共済組合の相談窓口の連絡先を、組合員向けのページで控えておく
  6. 「辞めたい」の中身を、上の表で分けてみる

辞めるかどうかは、そのあとです。判断の順番は公務員を辞めたいと思ったら、決める前に確かめる3つのことに、在職のままできる準備は辞める前に何をしておくかにまとめています。

まとめ

  • 限界が近いときは、体を守る、選択肢を増やす、決める、の順番で進める
  • 精神疾患で休職した教育職員は、令和6年度に7,087人。一人で抱え込まない
  • 退職の前に、休む・減らす・離れるの3つの手がある。休職なら戻る道が残る
  • 相談先は目的で分ける。進路は、外に出た人と中に残っている人の両方に聞く
  • 辞めると決めたら、時期とお金(雇用保険がないこと、退職手当、社会保険、住民税)を先に確かめる

教員を辞めたいと感じるのは、あなたが弱いからではありません。辞めても、辞めなくてもいい。大事なのは、限界の状態のまま一人で決めないことです。

参考資料

よくある質問6選

質問1教員を辞めたいと思うのは甘えですか。

甘えかどうかで考えるより、いまの状態を具体的に見るほうが役に立ちます。文部科学省の調査では、精神疾患による病気休職者は令和6年度に7,087人(全教育職員の0.77%)で、要因として多いのは児童・生徒への指導そのもの、職場の対人関係、事務的な業務です。限界を感じる背景には、個人の資質だけでは説明できない仕事の構造があります。

質問2限界のときは、休職と退職のどちらを先に考えるべきですか。

心身の不調があるなら、先に医療機関を受診し、休むことを考えてください。休職は身分を残したまま離れられるので、回復してから辞めるかどうかを決められます。退職を先にすると、戻る道が細くなります。

質問3年度の途中で辞めるのは無責任でしょうか。

年度末での退職が一般的なのは事実ですが、心身が限界のときに我慢して続けることが、結果として周囲への影響を大きくすることもあります。年度の途中で離れる必要があるなら、まず病気休暇や休職を検討し、退職とは分けて考えてください。

質問4教員を辞めるか迷っています。誰に相談すればいいですか。

目的ごとに分けるのがおすすめです。体調は医療機関や公立学校共済組合の相談窓口、制度は所属の人事担当に相談します。進路は、すでに転職や独立をした人と、いまも公務員として働いている人の両方に聞くと、辞める側にも残る側にも偏らずに考えられます。コムパスは、キャリアに悩む公務員・教員が、すでに転職や独立をした人と、いまも公務員として働いている人の両方に相談できるコミュニティです。

質問5教員を辞めたら、失業保険はもらえますか。

公務員は原則として雇用保険の対象外のため、民間の会社員と同じ失業給付はありません。退職手当の額が失業給付に相当する額に満たない場合に差額が支給される仕組みはありますが、条件があります。辞めたあとの生活費は、退職手当の見込み額から先に計算してください。

質問6教員の経験は、学校の外で通用しますか。

担任の仕事は、目標を一緒に立てて伴走する仕事でもあります。主宰の榊原立城は、辞めたあとは「16年の経験は学校の外では活かせない」と思っていたものの、いまのコーチングの仕事は、当時の生徒との関わりの大人版だと話しています。外の仕事の言葉に置き換えると、活かせる場面は見えてきます。